肌をやさしく「くるむ」化粧品を東葛西の地から送り届けている、KURUMU。若い会社ではあるもの、主成分である泥の基礎研究は祖父から続けられてきたものだ。代々の想いを受け継ぐ手塚平代表取締役に話を聞いた。
オリジナルの洗顔料や化粧水などを販売しているKURUMU。モンモリロナイトと呼ばれる鉱物を泥状にした素材を根幹に、安心できる「顔が見える化粧品」を目指している。
「製品開発や工場設計などを研究していた私の祖父が、1965年頃からモンモリロナイトを研究しはじめたのがきっかけでした」
モンモリロナイトは日本をはじめ、世界中で産出する。1枚100ナノメートルという極薄の層が積み重なったトランプ構造になっており、さまざまな用途で使えることから「サウザンユウセス(千の用途がある)」ともいわれている。
「研究を進めるうちに祖父は美容にも役立てないか?と考え、試したところ確かな効果を得ることができました。それで美容分野へ進出しはじめたのです」
手塚さんも泥入りのお風呂に浸かったり石鹸代わりにしたりと、幼い頃から慣れ親しんでいたと振り返る。当時は、美容のために顔に泥を塗るという行為に理解を示す空気はなかったが、現在では基本的な美容成分だと広く認められるようになった。
そうして泥成分入り化粧品をOEM生産するようになったが、やがてオリジナルブランドの設立を夢見るようになる。
「もちろん経営的な側面も大きいですが、モンモリロナイトの魅力をより広く安定してお客様にお届けしたいと思うようになったんです」そうした背景から、2013年にKURUMUを創業した。
モンモリロナイトは一般的な鉱物であるため、競合他社も少なくない。しかし、KURUMUのこだわりは頭一つ飛び抜けている。
「産出国によって特性は大きく異なっており、当社では美容効果に優れた国産にこだわっています。また、モンモリロナイトは水に溶かしてもダマになりやすかったり、腐食しやすかったりといった性質もあるのですが、50年以上にわたって蓄積された研究の下、化粧品として最適な状態に加工する独自技術を持っています」
自社サイトで解説記事を定期的に投稿するなどモンモリロナイトの普及にも努めており、KURUMUはパイオニアとしての地位を固めている。
配合成分や企業としての姿勢をすべて明らかにしたうえ、消費者と直接的なコミュニケーションを促進するため、東葛西の本社1階にリアル店舗も設けた。コンセプトは、「顔が見える化粧品」。その理由を、手塚さんは「化粧品ほど、安心・安全が求められる製品はありませんから」と話す。
人と人とのつながりを大切にするため地域の催事にも積極的にかかわり、地元との関係も深めている。2017年からは、「えどがわ楽市」というイベントも主催している。
製造以外はなにもかもはじめてで、設立当初は困難の連続だったという手塚さん。特に注力したのが販路の創出と拡大だった。
「一度使ってもらえれば良さを感じていただけるという自信はありましたので、試用していただける機会を増やすようにしました。あるポップアップショップでは、チョコレートファウンテンの中にハンドクリーム状にしたモンモリロナイト溶液を入れ、気軽に触ってもらうようにしました。手に塗るとスベスベ、サラサラになるので、効果をよく実感していただけのではないかと思います」
参画した東東京モノヅクリ商店街では、ハンドクリームの製品化を進めた。試用で手に塗ってもらって評判を得ていたものの、実はハンドクリームのラインナップはなかったからだ。「東東京モノヅクリ商店街では、企画立案から製品化まで自社だけで行う方法とまったく異なっていて、刺激を受けました」
最近では、中国をはじめとする海外からのオファーも入るようになってきた。
ブランドにはオリエンタルな雰囲気もイメージしており、海外にも広く受け入れられると感じている。「まだ海外進出する段階ではないと考えていますが、チャンスがあれば積極的に検討していきたいと考えています」
製品ラインナップを急拡大していく予定はない。それよりも、洗顔料、化粧水、美容クリーム、パックといった基礎化粧品の魅力を広め、価値の最大化を目指していきたいと話す。
「化粧品はお顔という、とてもデリケートな場所に塗る製品ですから、なにより信頼が大切です。愛用品を捨て、知らないブランドでも気軽に移り変わるという人はほとんどいません。これからもまじめに励み、KURUMUの良さを一人でも多くの方にお伝えしていければと思います」
KURUMU FACTORY SHOP
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