「水と空気以外なら、何にでも印刷出来る!」と宣言する、
アポロ製作所 代表取締役・白井 健一さんにお話を伺いました。
白井「約55年前に機械やオートバイ、家具、ブランド什器などの金属プレートを作る会社として生まれました。ひと言でお伝えすると、他の会社がこりゃできないなぁ。と言うところをなんとかしようとする会社です」
大学を卒業後は商社でサラリーマンとして働いていた白井さん。
元々ご実家であるアポロ製作所を継ごうとは、全く考えていなかったのだそう。
年収も高く安定感も抜群の会社に属しながら、なぜ全く別の道へ行くことに決めたのでしょうか。
白井「世界で活躍し、日本経済に貢献できるような仕事がしたいと、学生時代から考えていました。その希望通り商社に勤めることができ、夢だった輸出に関する仕事にも携われ充実した日々を送っていました。ただ、長年仕事をしているうちに、社会に貢献しているなと実感することが減ってきたんです。好きなことを自由にやりたい、自分が役立っているともっと実感出来る仕事がしたいという想いが、強くなってきたんですね」
そこから独立を決め、友人と事業を立ち上げる。
白井「父に事業のことを相談し、このアポロ製作所に机を1つ借りました。そして、事業の内容がいいと思ったら出資してくれても構わない。と準備をしましたが、結果としてその事業が上手く行かなかったんです。友人とやるのは色々と難しかったですね…。そんな時、父から「うちの仕事を手伝ってくれないか?」と打診されたんです。「会社を立て直すのに力を貸して欲しい」と。そこでこのアポロ製作所を建て直すためにも、新たな仕事を作ろうと決めたんです。
ですので、よし!継ぐぞ!と入ったわけではありません。しかし、会社を建て直さないと!というプレッシャーはありました。社長のバカ息子だなと言われるのも嫌だったですしね(笑)」
実際にアポロ製作所で仕事をするようになって、いかがでしたか?
白井「それが、やっているうちにすごくやりがいが出て来たんですよ。実際に、モノヅクリを通してお客様の喜ぶ顔を見れることが、とても嬉しかったんです。あぁ、こういうことがやりたかったんだと思えました。そして、なんだかんだ日本はモノヅクリをやっていかないといけないんだなとも感じました。日本はほとんど輸入に頼っているので、輸出をしてモノを売らないと食べていけないですよね。さらに、ものすごい利益を上げている会社はモノヅクリの企業なんですよ。モノヅクリに携わり、当初の目標通り海外に輸出していきたいなと、今は思っています」
白井さんは、仕事を断らない。と聞きました。それには理由はあるんですか?
白井「ええ。先ず断りません。だから、失敗して赤字だったことも、もちろんありますよ。でもその中で、なんとか上手くいかせノウハウを蓄積する。先に繋がる仕事を進める。なので、失敗してもいいからチャレンジしてくれないか?と言っていただけたら、基本的には受けるようにしています。簡単にできないといったら、九官鳥と同じ。そこで思考は停止してしまいますから、こうすればできる、ああすればいいかな?と思考を止めないこと。チャレンジ精神を忘れないことは、何よりも大切にしています」
こだわりを持ちながら実績を上げるのは本当に大変だと思います。
白井さんがアポロ製作所に入られて年商がグッと上がったと聞きましたが。
「入社当時はうちの会社強いなと思うことは立地以外、正直無かったんです。
だからこそ、他の会社が断るようなことをやってきました。もちろん簡単な仕事でも引き受けますよ。お客様に喜んでもらいたいという気持ちは変わりないですから。
ちなみに、今のイチオシは、版型を使わずに印刷するオンデマンド印刷です。
オンデマンドというのは「欲しい時に必要なだけ」という意味。1つだけの注文でも、オンデマンドだと安くできるんです。
さらに、オンデマンド印刷は金は出力出来ないのですが、シルクスクリーン印刷で刷ることで、金の出力を可能にしました。金以外の所はインクジェットでないと出ないんですね。このように、機械を持っていれば誰でもできる仕事ではなく、職人のアナログ技術と組み合わせた複雑な取組みも可能にしています。
今後の課題は中国との差別化です。値段が高くてもアポロさんお願します。と依頼されるためには、非常に高度な技術を要するモノを出さなければならない。これを常に意識しています」
多種多様な技術を組み合わせ、独自の道を切り開くアポロ製作所。
事業を成功させても、決して手綱を緩めることなく、日々新しいチャレンジを続ける精神を持つ白井社長。貫禄たっぷりの見た目とはウラハラに、キラキラと輝く青年の心を持っているようだ。
株式会社アポロ製作所
東京都荒川区西日暮里1-49-11
TEL : 03-3802-3291
http://www.aporo-ss.co.jp/
文:東山さり
Photo_MURAKEN